私は理学療法士として、回復期病院にてこれまでたくさんの患者さんと向き合ってきました。痛みをとる、可動域を広げる、筋力をつける、立てるようにする、バランスをとれるようにする、歩けるようにする。目の前の課題・問題点に対して、今も評価とアプローチを繰り返す日々。
けれどあるとき、ふと違和感を抱くようになりました。

「リハビリを終えても、同じ不調を繰り返す人が多いのはなぜだろう?」
一時的には良くなるけれど、根本的には変わらない。体の問題は、身体だけじゃなくて心の状態や日常の生活習慣とも深くつながっているはずで、そこに十分アプローチできていない自分がいたのではないかと。
そんな時、同僚の理学療法士たちがティラピスやヨガを取り入れているのを見て「自分に足りていない何かがあるかもれない」と思い始めました。
ヨガとの出会い
ヨガに出会ったのは、私の後輩がヨガ(RYT200)を学び、ヨガが行えるレベルの患者さんに提供していたのが始めです。最初は、自分のためのセルフケアとしてヨガをはじめました。ところが、やってみて徐々に気づき始めました。

「ヨガって、ただのストレッチじゃないんだ」
呼吸に意識を向けること。今この瞬間の自分の体や心の状態に気づくこと。ポーズ(アーサナ)をとる中で「体をどう動かすか」よりも「どんな意識で動かしているか」を大事にされるんです。
これは、これまでの理学療法の中ではあまり重視してこなかった視点でした。
理学療法では、関節可動域や筋力の数値、疼痛の評価など、”見えるもの”や”測れるもの”が中心です。でも、ヨガでは**「感じること」「気づくこと」**が中心にあるようです。
この視点の違いが、私にとっても新鮮でした。

「体を見る目」が変わってきた
ヨガを続けていく中で、私の”体を見る目”が変わってきました。
以前は、姿勢を評価するとき「骨盤の前傾・後傾」「肩甲骨の位置」「アライメントの崩れ」など、構造的な観点に目が行きがちでした。でも今は、理学療法的視点はそのままに新たに**「この人はどんなふうに自分の体を感じているんだろう?」**と考えるようになりました。
・呼吸が浅くなっていないか?
・緊張している筋肉に、気づいていないのではないか?
・無意識に力みがクセになっていないか?
こうした**”内側の感覚”にアプローチする視点**を持つことで、患者さんの変化もより深く、長続きして診れるように感じます。
ヨガを通して私の理学療法が進化した・・・と思っている
私がヨガを学んで一番良かったと感じるのは、理学療法がより立体的になったことです。
・解剖学や運動といったロジカルなアプローチ(理学療法)
・呼吸・意識・感覚といった主観的なアプローチ(ヨガ)
この二つが合わさることで、患者さんの体をより多面的に捉えることができるようになりました。
また、自分自身も変わったと思います。以前は「ちゃんと治さなきゃ」と力が入っていた私が、今では**「一緒に整えていこう」という感覚**で関わるようになってきました。
これからの理学療法に必要なもの
これからの時代、ただ痛みを感じる、障害にアプローチするだけの理学療法では、限界があると感じています。
不調の背景には、入院中のストレスや生活習慣、思考のクセなど、さまざまな要素が絡み合っています。だからこそ、身体だけを見ても解決しないことが多いと考えています。
今、私のまわりの理学療法士たちも、ピラティスやヨガ、整体、東洋医学など、他の視点を学び始めている人が増えてきました。
私もそのひとりになりました。
理学療法の知識や技術をベースにしつつ、もっと”ひとりの人間”として全体を見る目を持ちたい。
そして、そのための手段として、ヨガはとても有効だと今は実感しています。
「理学療法だけじゃダメ?」
そう思ったあの日の自分に、今ならこう伝えたい。
**「それは”ダメ”なんじゃなくて、”もっと広げたい”というサインだったんだよ」**と。
ヨガを通じて出会った新しい体の見方を、これからの日々の臨床の中に活かしていきたいと思っています。
最後はきな臭い言葉になってしまいましたが、理学療法の良いところ、ヨガの良いところを掛け合わせて、患者さんの身体と心・心身共に向き合っていきたいと考えています。



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