はじめに/「もう装具、いらないのでは?」の声にどう答えるか?
臨床の現場で、患者さんやご家族からよく聞かれる言葉で、

「最近、装具がなくても歩けるような気がします。もう使わなくてもいいですか?」

「家では装具を付けずに歩いてますよ。本人も使わずとも歩けるって言ってます」
・・・というお話を聞きます。
確かに、機能回復が進めば装具なしでの歩行が現実的になってきます。しかし、装具の「離脱」には慎重な判断が必要だと思います。
この記事では、理学療法士の視点から「装具を外すタイミング」「離脱の判断基準」「外した後のリスクや対応策」について独自目線でお話したいと思います。
装具の目的を再確認しよう
まず、そもそもなぜ装具を使っているのかという原点を振り返る必要があるかと思います。
装具は、以下のような目的で入院中に処方されると思います。
・関節の安定性確保(膝折れの予防など)

・足関節背屈制限によるトゥードラック予防(足部の内反尖足など)

・筋力低下による歩行バランスの補助
・疼痛や変形に対する支持・保護(足関節の拘縮など)
・代償動作の軽減・・歩行パターンの修正
つまり、装具は「歩く為の一時的な補助輪」のようなもの。筋力やバランス能力が改善すれば、外すという選択肢が出てきます。
装具を外す判断基準/理学療法士がチェックすべきポイント
装具離脱を考えるとき、理学療法士として以下の観点で慎重に評価する必要があります。
①筋力・可動域の改善
・脱装具に向けて最も重要なのは筋力の回復です。
例えば、背屈筋(前脛骨筋)や大腿四頭筋がManual Muscle Testing(徒手筋力テスト:MMT)で4以上
・また、足関節・膝関節の可動域制限が改善していることも必要です。

特に足関節は片脚が地面に着くとき、歩行周期におけるIC(踵接地期)で踵が上手に付けるかが大事です。
②歩行パターンの安定性
・装具なしで歩行したときに、明らかな左右差や代償動作が強い場合(分回し歩行、痙性が強くなるなど)は再考が必要です。

・歩行時の足部(踵)接地(歩行周期で言うIC)やけり出し(歩行周期で言うTst~Isw)が自然かどうかを観察します。
③疲労時のパフォーマンス
・リハビリ室では歩けても、自宅や屋外で長距離・長時間の歩行が可能か?
・疲労時に歩容が崩れるようであれば、装具の離脱は時期尚早です。
④転倒リスクの評価
・装具なしでのバランス能力(バーグバランススケール(Berg Balance Scale:BBS)など)や歩行テスト(TUG(Timed Up and Go Test)など)も参考に。

・転倒歴がある患者では、離脱による再転倒リスクを特に慎重に検討する必要があります。
離脱に伴うリスク/容易な判断が機能低下を招くこともある
装具を外すことで自由度(足関節が動かしやすくなる)が増す反面、以下のようなリスクが伴います。
1.転倒・再発のリスク
・下肢の支持性が足りない状態で装具を外すと、転倒のリスクが大きくなります。骨折によって再入院につながる可能性もあるため、段階的な離脱が推奨されます。
2.歩行パターンの崩れ
・不十分な筋力で無理に装具を外すと、不良歩行パターンが固定化することがあります。結果的に二次的な関節障害や疼痛を引き起こすことも十分ありえます。

患者の心理的不安
・装具の離脱が可能な状況になったとしても「装具がないと不安で歩けない」という心理的依存がある患者もいます。離脱に向けては、段階的な訓練と成功体験の積み重ねが不可欠です。

実際の離脱ステップ/段階的なアプローチがカギ
完全に装具を外すのではなく、「段階的な離脱」が理想的で、以下のようなプロセスが推奨されます。
ステップ1/リハビリ場面での試行
・室内での歩行や平行棒内で短い距離からでも装具なし歩行のテスト(しっかりとした支持するものを持ってから段階的に)
・ビデオ撮影などで歩容を客観的に分析(装具装着時と装具なしの時の違いを動画で確認して共有)

撮影した動画などを用いて現象を可視化する事も大事な評価手段だと思います!
ステップ2/室内での短時間離脱
・自宅でのトイレ動作や室内歩行など、短距離・短時間からのトライしてみる
ステップ3/屋外歩行での試行
・装具なしでの屋外移動(段差・坂道などの不整地を含む*屋内との違いをしっかりと評価する)が可能かをチェック
ステップ4/完全離脱の判断
・生活全体で支障がないと判断されれば、主治医にも確認を行い正式に離脱をする
※多くの場合、理学療法士+義肢装具士+医師の三者判断が望ましいと考えます。
離脱後もフォローアップを忘れずに
装具を外した後も、理学療法士として以下の点に注意した方が望ましいと思います。
・定期的な再評価(1~3ヶ月後)
・筋力や歩行能力のモニタリング(動画などで経過を確認した方がいいでしょう)
・不調や不安の声に早期対応(離脱後の歩行における本人の不安や気になる所は確認が必要です)
場合によっては、再度の装具再導入も必要となるケースもあります。

まとめ/「外すこと」が目的ではない。適切なタイミングを見極める力が必要
装具の離脱は、単なる「卒業」ではなく、次のステージへのステップに過ぎません。大切なのは、「装具を外しても安全に・快適に生活できること」状態をしっかり評価することだと思っています。
理学療法士として、患者の機能だけでなく生活全体「Quality of Life(クオリティ・オブ・ライフ)」を見据え、最適な判断を下していく事が求められます。


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